ビクター業務用S−VHS編集機 BR−S811型
このデッキを入手してからかなり経過するが、内部の紹介をしていないので今回紹介してみる。
民生機と比較するまでもなく、外観も中身もヘヴィである。
とてもVHSデッキとは思えない内容である。
基板は各部分毎の名称が書かれ、すべてプラグインとなっている。
一番左の「AUDIO」基板は、入手したときから基板固定のビスがありませんでした。
まあジャンクですので致し方ない部分ではあります。
引き出してみた音声基板。見えにくいが、ハイファイ部とノーマル部に物理的に分かれている。
鬼のような大きさの電源トランス。冷却ファンも2個装備されている。
映像系の基板。調整用半固定抵抗の数が凄い。
デッキメカ部分。民生機とはつくりがまるで違います。
ヘッド、ピンチローラー周辺。
年式的には90年以前だが、ヘッドクリーナーが装備されている。
この時代の民生機には装着されていなかった筈なので、この装備も、もとは業務機のものだったのだろう。
某社のNEサーチ機にそっくりなヘッドまわり。多分、コレを見るに三菱がマネたんだと思います。
ブレーキ。かなりしっかりしており、少々のことではびくともしなさそう。
謎のディップスイッチ群。
ヘッドクリーナー周辺。民生機と違い、ヘッドクリーナーの腕も当然金属製である。
リアパネル。民生機と違い、にぎやかである。
映像系コネクタ。当然、端子はBNC、民生でいうところのS映像端子相当がY/C358と呼ばれるもの。
Y/C358からS映像への変換ケーブルが売られています。
家庭で使う為に、コンポジットの映像入力端子にはRCAピンからBNCへの変換コネクタが装着してあります。
TBCのスイッチがあるが、このデッキには内蔵されていないため無効。
左の方にさりげなく写っているのは業務用ならではのアワーメーター。1000hは振り切っています。
本当ならばメンテを受けなければなりません。
オーディオ系の端子。こちらはさすがにRCAピンですが、機種によってはバランス入力を備えるものもある。
また、ノーマル音声、ハイファイ音声それぞれが別扱い出来る。
面倒な事もあるので、入力についてはミックスさせることが出来る(スイッチで切り替え)。
別売の編集用コントローラーをつなぐための端子。
この大きさでは電気を食います。なんと115W。
大きさの比較。下がBR−S811。上がHV−V6000。
このデッキは、なんと言っても録画画質の良さがたまらない魅力です。
家庭用デッキでは、超高級機を使わないと「なんだかねえ」な画質ですが、このデッキでは「売り物に出来る画質」が出せます。
簡単な画質比較をしてみました。
送り出しソースは、モーニング娘。のプロモDVDのチャプター7「ふるさと」の1:09秒付近。
安部なつみ嬢です。
機材 DVDプレーヤ ソニー DVP−S707D(DNRレベル2)
謎の箱 VSP779
カラーモニター
ソニー KX−29HV3 (映像はモニタモード)
機器間はすべてS映像にて接続。
デジタルカメラ
富士フイルム Finepix 1700Z マクロ状態にて撮影。
ホワイトバランスはDVD映像を基準に手動調整。
テープ TDK XP(旧)
これが生のDVD再生映像。キレがあり、綺麗で、いかにもDVDな画質。
BR−S811の自己録画再生画像。
少しエッジが甘くなりますが、十分綺麗です。色合いが変わってしまうのがちょっと残念。
実際はかなりザラザラしています。いわゆる「スッピン映像」です。
BR−S811には、NRもなにもついていません。
BR−S811録画テープをHR−X3で再生。
うちの環境ではこの組み合わせが最良でした。
X3内蔵のノイズリダクションが適度にはたらき、ザラザラが綺麗になります。
顔のところに入っている横線はモアレと思われます。
BR−S811録画テープをHV−V7000で再生。
色合いがさらに変化しています。顔を横切る緑色の線はHV−V7000が完調ではないからだと思います。
HR−X3での自己録画再生映像。
これでも民生機ではレベルの高い録画性能ですが、BR−S811には負けています。
ノイズ感はS811録画に比べ少し多めで、BR−S811に比べて安定性にややかけるような気がしますが、普通はこれで十分です。
映像ポジションは標準。
HV−V7000での自己録画再生映像。
X3と違い解像度重視のキレのある映像のはずですが、デッキが完調ではないのが残念。
ちなみにCNR、TBCはオン。オートファインポジションはON。
BR−S811は、現在の私の環境では「ココ一発時のS−VHS録画用」として、余り使われることは現在ありません。
映像に対して目の肥えた人向けにS811で録画してビックリさせてやろうと思っています。(笑)
BR−S811が凄いのは、これが88年前後の製造だということ。再生映像は当時のデッキとよく似ているのですが、やはり録画は別物です。
最後に、業務用デッキですが、これはお勧めしたいです。
再生ははっきりいってイタイですが、その録画性能の高さは息を呑みます。
もちろんS−VHSのフォーマットの限界もあるのですが、やはり「別物」というべきでしょう。
そしてその操作性の良さ。民生のデッキではこれほど操作がなめらかなデッキは少ないです。
それこそ、4DDメカを搭載したHR−W1、HR−20K、NV−V10000クラスでないとこのような操作感は得られないと思います。
特殊再生ヘッドがない為ジョグシャトル操作をすると映像にノイズが入りますが、これは仕方がないところです。
また、ハイファイ音声が幅広ヘッドで記録される為、音質も有利だそうです。(詳しくは知りませんが・・・)
ただし問題も多く、タイマー録画なんて事は無縁ですし、音もうるさいですし重いです。
また故障時の問題も大きいです。基本料金だけで少なくとも2万円とか3万円とかするわけで、ここに部品代だのを足すとちょっとした修理でもン万円コースになってしまうので、気軽に使いにくいですね。
副産物としては、S811クラスの業務機であれば、映像信号のAGC回路が切れるようになっています。これは有名な話ですね。
ちなみにDVDのマクロビジョンは無理です。
ネックはやはりその値段で、ジャンクといえども数万円します。程度の良いものであればかなりいい値段がするので、気軽に買いにくいところではあります。しかし、その性能は一度経験すると戻れません。