山水 プリメインアンプ AU−9900型 修理編

 先日の紹介の中で、「ノイズが多く使えない」AU−9900でしたが、意を決して修理をすることに。
 とはいえ、1977年製のこのアンプ、何かと病巣を抱えていそうで少し躊躇するところも。
 とりあえず、考えていても仕方ないので、回路図を取り寄せることに。

 回路図自体は、山水のサービスステーションにお願いすればコピーを有償で入手出来ますが、あくまで好意でコピーをおわけ頂いている程度の認識で、丁重にお願いしてみました。

 さて、着手前に、不具合箇所の切り分けですが、手っ取り早いのは、このアンプの場合プリアウト、メインイン端子がついている関係で、動作中にその切り替えスイッチを動かして「separate」状態にした場合の状況を確認してみました。
 結果、切り替えてもノイズは出ています。続けて、適当な入力端子に信号を入れてプリアウトから出してみましたが不具合なく出ました。
 やはりパワーアンプ部が良くないようです。

 いろいろと調べてみると、殆どの場合この手のノイズは、パワーアンプ初段のトランジスタの劣化によるものらしいです。
 ここで私は思いました。

 「半導体は劣化しないのが売りではなかったのか?!」

 某社など、「トランジスタは永久保証します」とか言ってたし。

 愚痴ってても仕方ないので、修理にかかります。

パワーアンプのドライブ段基板を外したところ。コネクタ様のものは半田付けとなっており、あまりメンテナンス性は良くない。色の順番もありますので、基板部分からコネクタ毎外すのが良いかと思われます。
取り外した基板。
古いのでどの部品も怪しいですが、ことさら怪しいのはこのちょっと大きめのトランジスタ類。バイアス調整用の半固定抵抗も怪しい。調整などしようものならまっさきに接触不良となるでしょうね。
今回は作業を自室ではなく、物置部屋でやりました。重量が重たいこともあり、基板だけを外して自室で修理することにしました。
パワー段の回路図の一部です。めんどくさいのでデジカメで撮影しました。取りあえず一通りの品番を紙に控えました。また、ついでに電解コンデンサも交換することにしました。
メモを持って日本橋へさくっと行ってきました。トランジスタは、ほとんどが互換品などで、そのものズバリは2種類だけあるのみでした。買ってきたのは以下の通り。

2SA847→2SA970(現行互換品)
2SA818→2SB717(互換品)
2SC1628→2SC3600(類似品)
2SA706→2SB647(類似品)
2SC1124→2SD667(類似品)
2SA562→OK
2SA735→OK

特に2SA706、2SC1124系は一回り小さくなっていて少し不安。この2つ、ソニー製なんですね。

こういうじゃまくさい依頼を日々受けているであろうシリコンハウス共立の方々には頭が下がる思いです。

2SA818、2SC1628のコンプメンタリ品には現行の後継推奨品があるようで、それはいずれ入手する予定です。今回はそれに気づかずそのままです。
半導体は全取り替えする予定でしたが、オリジナルを出来るだけ残したいという考えからも、残せる半導体は残そうと考え、目視するに極めて疑わしい、2段目のトランジスタを交換することにして、仮で音出しをしてみました。上の回路図で言うところでは、2SA818/2SC1628です。
写真は、片chのみ交換を終えたところ。

仮配線で音出しをしましたが、ノイズは消えています。交換してないchはノイズが出ています。やはり不具合はこのトランジスタにあったようです。
両chとも、無事に交換が済んだところ。
音出しをしてみます。わくわくです。

尚、トランジスタの足は交換前と後でピン配列が変わっていますので要注意。うっかりパッケージのまま配線するとまちがいなくアンプを壊します。
データシートをインターネットで調べてから確認。いい時代になったものです。

昔はNiftyのELISNETなる、アダルトなダイアルQ2なみの課金の半導体情報ネットに接続して調べていましたが・・・。
両chとも交換を終えて配線し、SL−P990を接続し音出し。
左右でSPが違うのは御愛敬ということで。このようなおもちゃスピーカーでも出る音が凄いです。かなりのドライブ力があることが判りました。
強靱なパワーアンプ部。ヒートシンクと電源で本体の2/3ですから凄いものです。
無事に音が出ることが確認できたので、再度組立てていきます。
スピーカー端子が時代を感じさせます。
底板を外したところ。何も言うことはありません。凄い密度です。
パワーアンプ部の電源。強靱です。
プリアンプ部でもこの内容。恐るべし。
ファイナル段はこんな感じ。手間掛かってます。
修理したパワーアンプ部基板。電解コンデンサが目立ちます。
部品交換した基板の様子。
結局、トランジスタに関しては初段と2段目までは交換しておきました。

小さな電解コンが残っていますが、これはバイポーラ型の無極性品でした。交換時に判明した為、今回は交換を見送りました。
交換した部品類。上の4本のトランジスタがノイズ源でした。電解コンデンサはお約束ということで。下の4本のトランジスタは取りあえず交換したというところ。

電解コンデンサは、同じ取り替えるなら音響用にすべきだったかと思いますが、取りあえずはベースの音質を聞いておきたくて、敢えて汎用品にしました。
音出ししてみましたが、AU−D907Xと同程度、もしくはもうちょっと良いかも?と思いました。
不具合はまだ残っています。各種スイッチ類の接触不良などがありますが、これはぼちぼち直していく予定です。

また、バイアス調整をしてないので何とも不安です。これも方法が判り次第半固定抵抗交換を含めてやってみる予定です。

どなたか方法をお教え願えませんでしょうか。

 最後に、本アンプの仕様が判りましたので引用しておきます。

AU-9900 標準価格¥140000 1977年発売
実効出力80W+80W 全高調波歪率(定格出力時)0.08%以下
スピ−カ−端子 A,B A+B(4スピ−カ−)
PHONO-1 入力感度 インピ−ダンス 3段切換え。
phono-2 2mv/50Kオ−ム。
低域 中域 高域ト−ンコントロ−ル(タ−ンオ−バ−付き)
低域 高域 各3段フイルタ−付き。
TAPEコピ−(A〜B B〜A)AUX 2系統 チュ−ナ−独立スイッチ。
プリ、パワ−独立で使用可能。

重さ 17,9kg

 いや、いいアンプです。時代もだいぶ古いですし。
 こういうアンプは動態保存すべきと考えます。山水電気の作品だと思いますから。

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